寂地山は山口県の最高峰であり、ブナの林で覆われた山頂は静かな佇まいである。春の寂地山と言えば、やはりカタクリの花であろう。寂地山から右谷山に続く稜線道には、 びっしりとピンクのカタクリの花で埋め尽くされるほどだ。今回もカタクリの花を目当てに春の寂地山へ何年か振りに出かけた。
寂地山は「じゃくぢさん」と発音するのが本当らしいが、最近では「じゃくちさん」が一般的になっているようだ。登山口の寂地峡へ 行く途中、地元のおじさんに道を聞いたら、確かに「じゃくぢさん」と発音していた。
カタクリの寂地山・右谷山を行く(山口県)
〜 寂地峡−みのこし峠−右谷山−寂地山−林道−寂地峡 〜

【山行日】 2003年4月26日(土)  天気:曇り、雨
【コース&タイム】 寂地峡P(9:04)〜木馬トンネル(9:24)〜竜生橋(9:30)〜竜ガ岳(9:45)〜竜生橋(9:55)
〜水車小屋跡(10:30)〜タイコ谷分岐(11:10-20)〜みのこし峠(11:55-12:04)〜
右谷山(12:33-13:30)〜みのこし峠(13:51)〜鞍部分岐(15:00)〜寂地山(15:10-24)
〜林道(16:10)〜途中、軽トラ乗車〜寂地峡P(16:54)【行動時間】約7時間50分
【主なピーク】竜ガ岳(672m)、右谷山(1234m)、寂地山(1337m)
【駐車場】寂地峡駐車場 【メンバー】T,H,K
【利用温泉】石船温泉(\300) 【地 図】「安芸冠山」2.5万分の1

 アプローチ(寂地峡へ)

寂地峡キャンプ場の綺麗な駐車場
早朝4:50、苅田町の自宅を出発する。途中、Hさん、KさんをPick upし、AM6:50に下関ICから高速へ乗る。 天気は生憎の曇り空で今にも雨が降り出しそうだ。8:10、六日市IC通過。 寂地峡入り口の酒屋さんで冷たいビールを購入し、8:45に今回の登山口である寂地峡駐車場へ到着。
寂地峡キャンプ場の駐車場であり、トイレのほかに、ログハウスのお店などもあり、綺麗に整備されている。 到着したときは、車は数台程度であったが、準備をしているうちに、次から次に登山者が増えてきた。
駐車場横の車道を上がって行くと、林道、犬戻峡を経て寂地山へ行くことができるが、我々は寂地峡から登り、林道を下る周回コースをとることにする。
 「五竜の滝」から「みのこし峠」へ

川沿いのキャンプ場内を行く
駐車場からは川沿いにキャンプ場内の道を行く。
バンガローなどもあり、綺麗に整備されたキャンプ場である。
川のせせらぎがとても心地よい。ただ、天気は相変わらず優れないが、少し薄日がさしてきており、ちょっと期待する。

キャンプ場の中間あたりに、今回の登山口である五竜の滝入り口がある。

五竜の滝の登山口。赤い橋を渡って行く。
赤い橋の横に、一番目の滝である「竜尾の滝」が見える。 入り口右手には飲むと長寿になる「延齢の雫」の水場があり、 ふと見ると、早速、Kが口をつけていた。長生きするぞー。

赤い鉄製の橋を渡り、五竜の滝が連続する峡谷を登っていく。 「登竜の滝」、「白竜の滝」、「竜門の滝」と水量の多い滝が続き、最後が「竜頭の滝」である。 手すりに頼りながら、峡谷の狭い急な道を登ると、「木馬トンネル」に出る。

水量が多い滝が連続する。

迫力ある「白竜の滝」を眺める。

手彫りの「木馬トンネル」
木馬トンネルは木材を運搬するために、手のみで掘ったトンネルであるらしい。 最低高さ部が1.6mなので、大人は注意しないと頭を打ってしまう。

暗いトンネルを注意深く出ると、そこには眩しい緑の世界が広がっていた。

竜生橋にて
トンネルを出て少し下ると竜生橋の渓流沿いに出る。
ここから、竜ガ岳までピストンすることにした。階段状の道を上がって行くと、花崗岩の露岩で形成された竜ガ岳山頂へ出る。 花崗岩の上に小さな「観音様」が祀られている。
この露岩からは見晴らしが素晴らしい。寂地峡駐車場や付近の集落盆地を見下ろすことができる。
再び、竜生橋まで戻り、渓流沿いの道を進む。

竜ガ岳の山頂にある「観音様」

寂地峡付近の集落が見下ろせる。

緑と渓流が心地良い登山道を行く。
ここからタイコ谷分岐までは、渓流沿いの心地よい道を行く。ほとんど傾斜はなく、渓流沿いに奥へ奥へと入って行く。 渓流沿いの登山道の脇には野草が多く、タチカメバソウ、ナツトウダイ、チャルメルソウなどいっぱいだ。特に、九州では見ることができない「タチカメバソウ」は白く清楚な花で感動した。
途中、水車小屋跡を過ぎ、奥へとひたすら歩く。

清楚な「タチカメバソウ」

道沿いにいっぱいの「ナツトウダイ」

みのこし峠への登り
しばらく進むと、タイコ谷分岐に突き当たる。ここから漸く本格的な登りとなる。
休憩している脇に小顔のエンレイソウが揺れていた。天気は確実に悪化しているようで、このあたりからいつ雨が降り出してもおかしくないほど暗くなっている。
階段状に整備された急な登山道を喘ぎながら登っていく。ブナが見られ始めると、縦走路のみのこし峠は近い。
 みのこし峠から右谷山へ。そして寂地山へ縦走。

縦走路の「みのこし峠」
みのこし峠は縦走路の鞍部であり、右へ行くと寂地山への縦走路となり、左へ行くと右谷山となる。 みのこし峠では、多くの登山者が昼食をとっていた。このあたりから、既に登山道の脇はカタクリがいっぱいである。 天気が悪いため、生憎、ほとんどの花は開いておらず、パラソルのように閉じている。

少し休憩した後、そうそうに右谷山へ向かう。右谷山へはブナ林とチマキザサの登山道を行く。天気が良ければ、とても心地よいのだが。

右谷山山頂にて
途中で雨になったが、あまり大降りではなく助かる。右谷山山頂はブナ林の中、ガスに煙っている。 山頂には特徴的に曲がった木があり、「また会えたね。」と触ってみた。
山頂は木々に囲まれており、展望はほとんどない。
天気は良くないが、ここで昼食とする。寒いが、ビールで乾杯!
今日は下山後に少し移動してキャンプなので、時間的にゆとりがある。 「寒い〜!」とか、なんだかんだ言いながら、ほぼ一時間、山頂で過ごす。

カタクリの縦走路を行く。
再び、みのこし峠へ戻り、いよいよ寂地山への縦走へ向かう。ブナ林とチマキザサの縦走路は快適だ。 おまけに、登山道の脇にはどこもカタクリの花でいっぱいだ。ただ、残念なことに、天気が雨のため、ほとんどのカタクリ の花が閉じてうつむいている。オールバックの開いたカタクリもいいが、雨に濡れそぼった「うつむき加減のカタクリ」もまた雰囲気があっていいものだと満足する。

雨に濡れそぼる「カタクリ」

雨に濡れしっとりと開きかけ。
 寂地山頂へ。そして、林道へ下山。

小雨に煙るブナ林
チマキザサと自然林の縦走路を、カタクリを堪能しながら歩く。
しばらくすると、開けたブナ林に到着する。寂地山手前の分岐の広場である。右手からは林道からの登山道が合流している。
苔むしたブナの倒木、小雨に煙るブナ林はなんだか不思議な雰囲気を醸し出している。幽玄の森である。
HもKも、じっとその森を眺めていた。
ここから山頂までは10分程度である。

山頂のブナ林
寂地山の山頂はブナ林の中で広々としている。どこが山頂かわかりにくいが、大きなブナの根元付近に小さな石の祠が祀られている。 その奥あたりに山頂の標識が立っている。
小雨で白いガスがかかっているため、とても厳かな雰囲気である。しばらく、この雰囲気を堪能する。
そして、山頂標識の前で最近ごく一部で流行っている?、山頂での「命!」ポーズ。なんとも恥ずかしいものだ。
ゆっくり楽しんだ後、山頂を後にする。

寂地山山頂で集合写真

最近流行り?の山頂で(裏)命!

林道へ出る。
山頂からは林道へ一気に下る。寂地山名物の寂地杉の林の中のかなり急な道を下ると明るい林道へ出る。
これからが、長い林道歩きとなる。雨はすっかり止んでいる。林道脇のミツバツツジのピンクが綺麗だ。 ミツバツツジを見ながらのんびり林道を下っていると、突然、軽トラが横に止まった。草刈帰りのおじさんである。「良かったら、乗らんね?」。 三人で顔を見合わせ、「ありがとうございます!」と何の躊躇もなくすぐに荷台に飛び乗ったのは言うまでもない。 荷台から上を見上げると、新緑が流れて行った。雨は上がり、青空が覗いていた。


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