祖母・傾山系は大分県と宮崎県の県境を東西に連なり、西端では熊本県に接する九州を代表する山域である。 上畑から大障子岩へ続く縦走路は主峰祖母山から障子岳あたりでU字に湾曲し、古祖母山・本谷山・笠松山を経て、もう一つの主峰・傾山へ至った後、九折を経て再び上畑へ戻る遠大な周回コースを取ることができる。
その周回コースの総距離は約37Kmであり、自然がふんだんに残るこの縦走は九州の山屋なら誰もが一度は歩きたいと思うコースである。
祖母傾完全縦走(大分県)
【一日目】
上畑・健男社−前障子岩−大障子岩−宮原−祖母九合目

【山行日】 2004年5月1日  天気:曇り
【コース&タイム】 健男社(6:00)〜黒岩ピーク(8:05-15)〜前障子基部(8:55-9:05)〜大障子岩(10:35-11:15) 〜八丁越(11:41)〜鹿ノ背(12:23)〜池ノ原展望台(12:53-13:08)〜宮原(13:34-43) 馬ノ背(14:18-29)〜祖母山九合目(14:43) 【行動時間】約8時間35分
【主なピーク】前障子岩(1409m)、大障子岩(1458m)、池の原(1433m)
【駐車場】健男社周辺
【地図】「小原」「祖母山」「見立」2.5万分の一 【メンバー】T(A,B,N)

祖母傾縦走の山並(カシミール画像)を見る:presented by Kenn

 前置き
GWは北アルプスへ遠征に行く予定であったが、用事が入り、日程が合わなくなったので直前に断念せざるを得なくなった。 予定がポッカリ空いてしまったが、なんとか3日間は日程が取れそうだったので、アケボノツツジの時期の祖母傾縦走に出かけることにした。 運のいいことに遠征に備えてボッカトレで体は既に出来上がっていた。
季節も申し分なく、この時期の祖母傾はアケボノツツジとシャクナゲでピンクに染まる。新緑と花を楽しみながらゆっくりと歩くにはこの上ない時期とコースである。 は言え、一人では夜のテントが寂しいので、なんとか同行者を探そうと声を掛けてみるが、なにぶん、GW間近なので皆さんほとんどが既に予定が入っている。 ふと、やまびこ会の掲示板を覗いてみると、NさんとBさんが祖母から大崩までの4泊5日の縦走計画をぶちあげていた。 その計画の1日目は北谷から祖母九合目であるので、部分的ではあるが二日目は一緒に歩けそうだった。 また、熊本のAさんが尾平越までなら同行できるとのことなので、途中までご一緒することになった。 Aさんが一緒なので3人用テントをパックする。この時期の祖母傾山系は登山者が多いので小屋は満杯となることが多い。 この時期の縦走は小屋をあてにせず、テントまたはツェルト泊を決めこんだほうが無難である。宴会用のツマミと酒を詰め込むと重量は23Kgとなったが、唯一の楽しみははずせない。
今回の縦走にあたっては、山仲間である宮崎の遊(也)さんの「祖母傾大崩縦走記録」(宮崎きまぐれ山歩)を参考にさせていただき、また本人とも電話でいろいろアドバイスをいただいたことに感謝したい。
 上畑・健男社から前障子岩へ

健男社横の登山道入り口
Asimoさんとは当日の早朝4:30に「原尻の滝」駐車場で待ち合わせることにした。 こちらは前日の夜中に「原尻の滝」まで入り、一人で焼酎をチビチビやった後、少し車内で仮眠する。
4時半前、約束どおりAさんがHondaの車をかっ飛ばしてやってきた。Aさんは二日目は尾平越から下山であるので、車を尾平にデポしておかねばならない。薄暗い中、先ずは尾平へ車を走らせる。
尾平にデポ後、再び上畑の健男社に戻る。駐車場は既に車でいっぱいであるため、邪魔にならないよう周辺に止める。
【6:00】、健男社登山口出発。

民家の横を通りながら進む。

振り返ると傾山の山容が見える。

薄暗い樹林の中の急斜面をひたすら登る。
時折、滑って荷物に振られる。

民家の脇から登山道へ入り、薄暗い杉林の急な登りに取り付く。ここの最初の登りは雰囲気が暗くてあまり好きではない。
何度か谷を横切り、支尾根に取り付くとかなり急な登りとなる。滑りやすく、バランスを崩すと荷物に振られる。 途中、4人の中高年のパーティーが休憩しているのに会う。話をしてみるとなんと3泊4日で大崩まで縦走とのこと。 この後は、祖母九合目まで抜きつ抜かれつとなるが、歩きはかなりしっかりしている。

黒岩のピークにて。傾山方面が見渡せる。
【8:05】、支尾根を登りきると目の前が開けた尾根の頭に飛び出る。表示はないがここが黒岩のピークであろう。 ポールが1本立っている。

ここからは傾山の山並みが見渡せるが、雲から出たり隠れたりの繰り返しである。天気は確実に下り坂である。 これから向かう大障子岩は雲がかかっている。

黒岩のピークから大障子方面を見るが、雲がかかっている。

ムシカリとアケボノの向こうに九重連山が見える。

縦走路を行く。時折、前障子岩が顔を出す。
黒岩のピークからは尾根の北側を緩やかに登りながら進んでいく。樹木の間から、時折、前障子岩のピークが見え隠れする。 50分ほどで前障子岩の基部に着く。【8:55】

右手の岩場を登っていくと3分ほどで前障子岩にたどり着ける。ここは登りはいいが下りは注意が必要だ。ロープの持参がなく、特に下が濡れているときは避けたほうが無難である。 縦走路は前障子岩からは再度基部に戻り、岩の南側基部(左方向)を巻いて行くように進む。

前障子岩の基部。縦走路は左手に進む。

基部から見る前障子岩。
 前障子岩から大障子岩へ

目の前に大障子岩のピークが見えてくる。
前障子岩からはしばらく下った後、かなりのアップダウンが連続する。時折、目の間に大障子岩のピークが見え、その右手奥に祖母もかすかに見えるが、まだまだ遠い。 20Kg以上の荷物でこのアップダウンはしびれた。気合一発で乗り切るだけだが、周りのアケボノツツジとシャクナゲの花が元気を与えてくれる。

大障子岩の山頂は縦走路の分岐から少し右に入ったところにある。山頂標識を過ぎると目の前が開け、祖母山へ続く大パノラマが広がる。

アップダウンに苦戦。途中の大岩の横で休憩。

岩場の横に咲く、ピンクのシャクナゲが綺麗。

大障子岩より望む祖母山方面の絶景!
【10:35】、前障子からおよそ1時間半で大障子岩へ到着する。大障子岩からの展望は素晴らしいのひとことだ。今までのきつさが吹き飛んでしまう。
目の前には縦走路の向こうに主峰祖母山の秀麗な三角錐の山容が聳え、その山並みは障子岳から湾曲して古祖母、本谷山から傾山へと続く。

この雄大な景色を見ながら、少し早いが昼食をとる。ここで唯一の缶ビール1本を飲む。荷物の軽量化のため、焼酎以外はこの缶ビール1本だけだ。

大障子岩山頂にて。Aさん(左)とTaka(右)。

末端より見る大障子岩山頂
 大障子岩から宮原へ

再び縦走路を行く。
分岐に戻り再び縦走路を行く。少し下ると真横に大障子岩の黒い塊がまるで軍艦みたいにすごい迫力だ。 黒茶色の岩とアケボノツツジの景観が綺麗だ。

ここからは八丁越までところどころ岩や木につかまりながら一気に下る。途中、登ってくる数組の登山者とすれ違う。誰もがきつそうだ。「もう少しですよ!」と励ます。やがて、スズタケの道となり、左手からの愛山新道を見送り約2分で八丁越に到着する。【11:41】

横を見ると大障子岩の迫力ある景観

岩とアケボノツツジがきれい

スズタケの中の八丁越
ここから池ノ原までは緩やかなアップダウンを繰り返しながらの登りとなる。縦走路は尾根の北側に続いており、スズタケを踏み分けた道が続く。 八丁越から池ノ原までのこの間は特に長く感じる。スズタケの道が何度と同じところを通過しているような気がしてくる。

大崩縦走の4人組とは相変わらず抜きつ抜かれつが続く。

鹿ノ背を渡る。
しばらく行くと、岩場の鹿ノ背が現れる。左手が切れ落ちており、右手には岩が斜めに傾斜しているのがいやらしい。 ただ、意外と幅が広いので慎重に渡れば問題ない。鹿ノ背というより象ノ背のような気がしてくる。荷物が重いのでバランスに注意して渡る。
岩が乾いているときはいいが、雨や凍結の時はかなりの注意が必要であろう。
ピンクのシャクナゲが色を添えていた。振り返ると、4人組が追いかけてきた。

振り返ると4人組が来ていた。

鹿ノ背とシャクナゲ

再びスズタケの道を行く。
鹿ノ背からは再びスズタケの道を行く。登りつめると、池ノ原展望台に飛び出る。【12:53】
ここからの景色も圧巻である。目の前に古祖母山から傾への山並みが連なる。眼下にはサマン谷が切れ込んでいる。しばらく展望を楽しむ。

池ノ原展望台から数分で池ノ原の広場に出る。スズタケが綺麗に刈られた広場であり、他の登山者が弁当を広げていた。

池の原展望台から対面の古祖母山方面を眺める。

池の原の広場

宮原に到着。
池ノ原からは30分弱の歩きで、見慣れた「宮原」に達する。【13:34】
ここまで来ればもう本日のコースも終ったも同然である。時間はまだ早いし、ここからはのんびりと行くことにする。ここで4人組みに再び追い抜かれた。
 宮原から九合目小屋へ

馬ノ背手前からアケボノツツジと祖母山
宮原からの登りになると、やたらと登山者が多くなる。時間的に下山者が多くすれ違うたびに挨拶をする。 ここへ来て荷物の重さが効いてきたのか、足取りが極端に重くなる。前を見ながらひたすら一歩一歩足を運ぶ。 馬ノ背あたりはアケボノツツジが多い、このシーズンはピンクで染まる。ただ、今年は今ひとつ花が少なくて残念である。

馬ノ背付近で下山中の高校生のパーティーに会う。宮崎の某高校WVのようだ。昨年、くじゅうの坊ガツルでも見かけたを思い出す。 高校WVは元気一杯で清々しくて見ていて気持ちいい。

馬の背でのんびり休憩
今日は九合目小屋までなので、馬の背でのんびりとする。 目の前の祖母山頂は雲に覆われ見えない。天気は確実に下っている。

【14:43】九合目小屋に到着する。小屋の幕場は既にほぼ一杯状態。なんとか、ひと張りくらいのスペースを確認して小屋に向かう。
小屋の前では大崩縦走の4人組が水を補給していた。これから今日中に行ける所まで行くらしい。
小屋に入ると既に多くの登山者で一杯である。夕方、北谷から上がってくるNさん、Bさんはまだ来ていない。

満員状態の九合目小屋
待ちきれないので、早速、Aさんと宴会を始める。ビールを持ってきてないので、最初から焼酎だ。目の前には缶ビールを十数本並べた若者がビールを飲んでいた。うらやましげに眺める。
待ちくたびれて、既にこちらは出来上がった頃、漸く、NさんとBさんが到着。ここから、再び宴会が始まった。
その後も登山者は三々五々、到着し、小屋は満杯である。テントを張る予定であった我々もいつの間にか小屋に転がっていた。

祖母傾縦走(二日目)を見る

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